episode23 ”アイツ”の背中

みなさん、こんにちは。
みなさんは怖い話はお好きですか?
このブログでは、私Cozyが実際に体験した恐怖体験、不思議な体験話。
そして私自身があまりのポンコツで在るが故にしでかした数多くのあり得ないほどの失敗談を書いております。

さて、今日のお話ですが、私Cozyが働いてる職場での出来事について書いていこうと思います。

今から数年前(5年は経っていないでしょうか)
僕が働く職場・・・都内のあるフェリー埠頭なんですが。一時期、真っ昼間からターミナルヤードで、旧車(族車)をノーヘルでふかしながら走る、迷惑な輩が現れました。

ヤードでは、トレーラーやトラック、無人航送の車を運ぶキャリアカーが時間を問わず出入りしていて、午後になればフェリーに乗る一般客もたくさんいます。そんな中で、バイクを”ブンブカ”吹かして我が物顔で走っている”アイツ”を、ほとんどの人は良くは思っていなかったんではないでしょうか。

僕自身もバイクが好きで乗っていますから、バイクの魅力は理解しています。
けれど、狭いヤードでトレーラーがバックをしている時でも、爆音でふかしながらすり抜けしていく40過ぎのおっさん。昔は暴走族で、今は旧車会。
100歩譲って”爆音が好き”とか”バイク最高”は良いとしても、同業のドライバーで、どこの会社の人かもみんな知っています。それでも、迷惑を掛けているとかは考えていないんでしょうかね。
まあ、考えていたらそんなことにはならないはず。
もしかしたら自分では、かなり”イケてる”と思ってるんでしょうか?
全く理解できません。

資材を用意したりするヤードの隅で、翌日の積込みの段取りなどをしていると、数百メートルほど離れたところから、いつものように爆音が聞こえてきました。
「うるせぇなあ」
「誰も注意しないのかな?」
「かなり迷惑なんだけど」
「アイツまたやってんのか?」
「ああいう奴は早くいなくなっちまえばいいのに!」
辺りにいる人から色々な文句が聞こえてきます。

僕は長距離や出張で東京にいないこともあるので、定かではないのですが。
数週間・・・数ヶ月が経った頃、『そういえば、あのうるさい”アイツ”最近見かけないな・・・仕事辞めたのかな?』正直、うるさいし危ないしで迷惑だったので良かったなと思っていました。

と、そんなある日。日曜の深夜、長距離の仕事へ出発する時のことでした。
いつものようにアルコールチェックを終わらせて、配車表を取り階段を降り始めると、階段のフロア特有の体重の乗った重い足取りのバタッバタッと靴音が必要以上に響く中、少し下から軽めのパタッパタッとサンダルを履いているような足音が聞こえてきました。

僕が勤める会社はターミナルビルに入っていて、正月でも深夜でも誰かしら人がいるので『ああ、誰か同じように下に向かっているんだな』と思い、そのまま降りていると2階から中2階に差しかかる角を曲がった時、いつの間にか前を歩く人に追い付きました。
前を歩いていた人は、いつもバイクで”ブンブカ”吹かしているあの迷惑な”アイツ”でした。
『なんだ、アイツだったのか。別に辞めた訳じゃなかったんだなあ』なんて思っていると、その”アイツ”は後ろに誰かいることが気に入らないのか、歩くスピードを早め、さっさと階段を降りて視界から消えてしまいました。
僕は気にならなかったので、とくに変わらない足取りで外に出てそのまま長距離に出発しました。

その長距離の仕事から数日が過ぎた頃、会社の先輩Sさんが僕を呼び止め、突然「あれさあ、知ってる?あのうるさかった”アイツ”いたじゃん?アイツさ、この前死んだんだって!」
「えっ?アイツって、あの族車に乗ってた”アイツ”ですか?」
と聞き返すと、「そう。”アイツ”さ、この前の日曜日にバイクで事故って死んだんだって」

・・・ん?日曜日・・・?
「それって間違いないですか?」と聞くと、Sさんは「間違いない、仲間から聞いたからさ」とのこと。
このSさんは、かなりヤンチャな人で有名なんですが、その手の情報もかなり詳しい人なんです。

・・・ということは、つまり。
あの日、深夜の階段で見たアイツは、すでに死んでいたんです!!
足音も姿も違和感が全然なかったのですが、言われてみると確かに一つだけおかしなことがありました。

それは、そのターミナルビルで僕達が使う扉は、一般客とは違う通用口なんです。少し古い鉄製の扉は、どんなに静かに開け閉めしようとしても”ギーッ、バタンッ!”と音が響くんですが、あの時少し前を歩いていた”アイツ”が出た時には、その音は聞こえてこなかったんです。
昼間ですら響く音だから、人気の少ない夜にはさらに不気味に響くはずです。その時は何とも思わなかったことも不思議なことでした。

もしかしたら”アイツ”は仕事が好きで最期に会社にお別れを告げに来たのかな?なんて思いを馳せてみましたが、真実はわかりません。迷惑な”アイツ”でしたが、死人を悪く言うつもりはありません。
とりあえず、ちゃんと成仏できたかな?と思うのと、2度と現れないでほしいと願う出来事でした。

今でも、人気の少ないほんの数時間ターミナルビルの空気が重く張り詰める、そんな時がたまにあります。
もしかしたら、そんな時には”アイツ”のような彷徨うものが見えていないだけで、どこかに現れているのかも・・・と、ふと思うことがあります。

今日も最後まで読んでいただきありがとうございました・・・

コメント

タイトルとURLをコピーしました